小林 好佐(S29,1B)
私の北大合唱団での生活は,入学2年目の冬,同期の今は亡き高橋哲郎さんや今も第一線で活躍している武田憲明さんに誘われて団室を訪れたときに始まります。それまで合唱団と名がつくサークルで歌ったことのない私は,両君の「スケさん(私の通称)のセンスと声なら大丈夫」というオダテにのって軽い気持ちで訪れたのです。当時の指揮者,遠藤良治さんが弾くオルガンの音に合わせての発声テストがあり1B配属が決まりました。
入団してみるとまわりは格違いの上手い人ばかり,とてもついて行けないのではないかと気後れしながらも皆が紳士的で楽しい日々でした。「下手な分は練習でカバー,暗譜だけは誰よりも早く」と心掛け,どうにか足手まといにはならなかった筈,と自負しています。
支笏湖畔での合宿,大阪,仙台での全日本合唱コンクール出場など懐かしい思い出が沢山ありますが,その中から一つ。
仙台からの帰りの汽車の中,4人集まれば当然のようにコーラスが始まります。初めは遠慮がちにピアニシモで歌っていましたがそのうちフォルテに,その時通りかかった車掌さんが我々の前に立ち止まりました。「せっかく楽しく歌っているところを申し訳ありませんが,この列車のお客様の中には身体の具合の悪い人,悩みごとを抱えている人など様々な人が乗り合わせています。この人達にとってはどんな素晴らしい歌でも耳障りかも知れませんね」と,“相手の身になる”こんな当たり前のことを改めてこの車掌さんから教わりました。
(第4回OB演奏会プログラムより転載)